絵本マニアが日本各地の古本屋さんをめぐり集めた絵本を紹介します

あさいち

 
あさいち
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保育業界経験15年以上の絵本マニア。 「絵本巡礼の旅」と称して日本各地の古本屋をめぐるのが趣味。 心に響く素晴らしい絵本をはじめ、 なかなかお目にかかれない貴重な絵本など たくさんの絵本を紹介していきたいと思います。

朝市は、海でとれたもの。畑でとれたものを持ちよる商いの場です。そこには、潮のかおりと土のにおいがたちこめています。また、そこに集まる人びとにとって、楽しいおしゃべりと社交の場でもあります。輪島の活気ある朝市の風景を絵巻物風に描きます。

福音館書店

かがくのとも130号
作者名:大石可久也 かたり : 輪島・朝市の人びと
出版社名:福音館書店

こんにちは、旅する絵本マニアです!
「絵本巡礼の旅」と称して日本各地の古本屋をめぐるのが趣味です。

今日も素敵な絵本を紹介したいと思います。

「あさいち」とは

朝市とは早朝から地元の野菜や魚介類、加工品などの特産物などを売っている市場のことです。

この絵本で舞台になっているのは石川県の輪島という地方です。
行かれたことはありますか?
私は一度だけ行ったことがあります。

輪島は日本海に面した能登半島の北部にある町で、冬は寒さが大変厳しい豪雪地帯です。
今回はそんな寒さが厳しい冬の輪島での朝市の様子が描かれたお話となっています。

輪島朝市は日本三大朝市のひとつといわれており、全国でも有名な朝市だそうです。

輪島の特産物

輪島の特産品は海の幸も山の幸も種類が豊富!

まだ夜が明けない海で漁師さんが底引き網で採った新鮮なズワイガニ、ブリ、タラ、タコ…
畑で雪の下に埋まっているのをかき分けて収穫したミズナやネギ…
他にも子持ちアカガレイ、こぬかいわし、いかの塩辛(くろづくり)、小豆、自然薯、つるし柿、花、しめじ、海藻…

絵本の中でも輪島で採れる地元の魚介類や野菜がたくさん描かれています。

輪島朝市の売り手の女性たち

輪島朝市の売り手のほとんどは地元の女性たち。

絵本の発行が1980年となっており、描かれている地元の女性たちの服装もどこか懐かしい…
頭にほっかむりをかぶり、はんてん(どてら)やモンペに長靴を履いた姿は昭和のどこか懐かしい雰囲気を感じさせます。

まだ薄暗い時間から、畑で採れた野菜や、漁師さんが海で採ってきた新鮮な魚介類などをリヤカーに積んだり、にどらに背負って、朝市にやってきます。
描かれているリヤカーがとても趣のあるもので、鮮魚や干物をぶらぶら下げてリアカーをひく姿は現代ではあまり見かけなくなってきているのではないでしょうか。

朝市では売り手さんがそれぞれ自分のお店を出す場所は決まっていて、道端にビニールを広げたり、テントを張ったりしてお店を出すのだそうです。
また冬は雪が降り積もるので、まずは道の雪かきから始まるというところが、北国の情景を感じさせられます。

売り手の女性たちはとても活気があって、ユーモアを交えて道ゆく人に「買(こ)うてくだー」と売り声が響かせています。
呼び込みのかけ声があちこちからかけられ、朝市ならではの人のぬくもりを感じられます。

魚を目の前でさばく姿、店先に魚を干す姿、樽の中に漬け込んだ魚を売る姿…
いろんな売り手さんの姿が描かれていて、まるで本当に輪島朝市に来ているかのようです。

寒い日でも売り手の女性たちのエネルギーと活気に心があたたかくなりそうですね。

地元のあたたかさ

能登の方言がそのまま話し言葉で書かれているので、掛け合いの言葉がとてもリアルです。

中でも一番おもしろかったのが、お客さんが「もどりにかうよ(帰りに買うよ)」と言ってお店を通り過ぎようとした時に、売り手のおばあさんが、
「うまいことゆうて。このおばば だませば ばけてでるぞー」とユーモア混じりで声をかけていた場面です。

おばば様、おもしろすぎます…!!

「のぶちゃんとこの ふね、いつ もどったが?」と今朝は漁船が何時に戻ったのか聞いたり、
「うちで こたつのもりを しとっても つまらんしねえ」とボヤいたり、
「みっかのひに おじじの ほうじやさけ、てつだいに きてくだし」と法事の手伝いを頼んだり、
お店が落ち着いてくると、売り手さん同士でも世間話に花が咲きます。

お店をしめる頃には「しまいもんやさけ」と安くまけてくれたり、売り手さん同士で物々交換したり。

ここでは紹介しきれない程、能登の方言でいろんな会話が繰り広げられていて、読んでいていつも新鮮でおもしろいです。
こんな人と人とのつながりが、売り手さんの仕事のおもしろさの一つなのかなと感じました。

まとめ

「あさいち」は輪島朝市の原風景やの魅力や能登の魅力がギュッと詰まった素晴らしい絵本です。能登の方言もユーモアたっぷりに描かれていて、本当に輪島朝市に来たように楽しむことができます。

輪島朝市に行ったことがある人も、行ったことがない人もぜひ一度読んでいただきたい絵本です。

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