はまうり
マヤの住む南の島では、旧暦の3月3日に“はまうり”というお祭りをします。はまうりの日の朝、潮の満ちた海で身を清め、日が昇り潮が引いた浜で潮干狩りをします。貝をたくさん採ったマヤは、潮だまりで大きな青い魚を見つけました。青い魚はマヤを海の中のふしぎな世界へ連れていってくれました。沖縄の民俗行事を美しい海の世界とともに描きます。
福音館書店
こどものとも396号
作者名:石垣幸代/文 秋野和子/文 秋野亥左牟/絵
出版社名:福音館書店
こんにちは、旅する絵本マニアです!
「絵本巡礼の旅」と称して日本各地の古本屋をめぐるのが趣味です。
今日も素敵な絵本を紹介したいと思います。
はまうりって何のこと?
「はまうり=浜下り」とは 沖縄地方で旧暦の三月三日(サニツと呼ばれる)に行われる雛祭に似た沖縄独特の女の子の伝統行事のことです。
この日はサングヮチグヮーシ(三月菓子)やフーチムチ(よもぎ餅)などのご馳走を重箱に入れたものや、酒肴を持って浜へ下りていきます。
はまうりの日は浜へ行く前に家の神様や仏壇にお供え物をして拝みを捧げます。
そして浜へ下り、潮が満ちた海に入り身を清め、健康を祈願したり穢れを落とす禊を行います。
その後には、持ち寄ったご馳走を食べながら、みんなで歌ったり踊ったり,ご馳走を食べたり楽しく過ごすのだそうです。
また、この日(サニツ)は満潮と干潮の差が一年で最も大きい大潮になる日です。
太陽が高くなる昼頃は干潮となり、海浜や干瀬が最も広がるため、魚や貝、海藻を採る潮干狩りをする風習もあるそうです。
パナリのプヤ
「パナリ」とはパナリ島(新城島)のことで、沖縄県の石垣島や西表島の近くにある小さな島のことだと推測されます。
パナリ島は、上地島と下地島という2つの島の総称のことのようです。
マヤの島はその周辺にあったのだと考えられます。
絵本の中でマヤが出会った「あおいさかな」はマヤのおばあさん曰く、遠い海の向こうからやってきてパナリの島に住んでいる「パナリのプヤ」という海の神の使いのことだそうです。
実際にそのような魚が実在するのかどうか気になって調べてみましたが、
アオブダイ?
イラブチャー?
リュウグウノツカイ?
実際のところは分かりませんでした。
きっとどれにも当てはまらない、崇高な海の神の使いなのだと思います。
タンディガータンディ
宮古地方の方言を調べてみると、
「タンディガータンディ」とは「感謝、ありがとう」
「トートゥ」は「尊い」
という意味が込められた言葉だそうです。
おばあさんとマヤが海に向かって手を合わせる場面では、海の神の使いであるパナリのプヤに感謝と敬意の気持ちを込めて拝んでいたのではないだろうかと考えています。
自然の美しさ
絵本に出てくる海の中の鮮やかな色の珊瑚礁や熱帯魚の絵は見ているだけでうっとりしてしまいます。
竜宮城があるとすれば、こんな世界なんだろうかと思うほどの夢のような世界です。
浜に下って行く場面でも南国の美しい花や蝶々が描かれていて、暖かい風と甘い香りがこちらまで漂ってきそうです。
最後のページでは月夜の下で踊りを踊っている場面が描かれています。
電気もない中、月明かりだけで暗くないのかな?と感じられた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
私の祖母も幼い頃沖縄に住んでいたのですが、「子どもの頃は月明かりの下で集まって踊ったりしてたよ」と話していたことがあります。
月明かりって本当はとても明るいんですね。
そして満点の星空、これも本当です。
実際に私は観光で石垣島に行った時に素晴らしい満点の星空を見ることができました。
石垣島は海にポツンと浮かぶ島なので、本州に比べて街灯が少なく、真夜中に空を見上げると本当に落ちてきそうなほどの素晴らしい星空が広がっているんです。
この素晴らしい自然をいつまでも大切に、未来に受け継いでいきたいですね。
作者の石垣幸代さん
絵本の作者の一人である石垣幸代さんは1951年に沖縄県宮古島久松に生まれ、ものごころついた頃から祖母の昔話を聞いて育ったそうです。
宮古島に伝わる昔話や伝統、美しい自然にふれてこられた石垣幸代さんだからこそ伝えられるお話だったのかもしれません。
1989年3月にこどものとも「はまうり」が出版されますが、石垣幸代さんは1996年にこの世を去られています。
まとめ
海の中であおいさかながマヤに伝えたメッセージ、
おばあさんとマヤが海に向かって拝む祈り、
命の尊さや、自然の中で生かされていることに気づかされました。
自然への感謝や敬意の心をこの絵本を通して伝えられているように感じます。
いつまでも語り継いでいきたい絵本ですね。