ふくのゆのけいちゃん
けいちゃんのうちは、お風呂屋さん。5月5日の菖蒲湯の日、年に一度の風呂場の絵の描きかえもあります。ペンキ屋さんがやってきて、大きな壁の絵をぐんぐん描きあげていきます。お母さんは掃除や洗濯で大忙し。お父さんは火炊き場で薪を燃やします。夕方4時にのれんをかけると、お客さんがやってきてお風呂場に話し声が響きはじめます。お風呂屋さんの一日の生活をいきいきと描きます。
福音館書店
こどものとも446号
作者名:秋山とも子
出版社名:福音館書店
こんにちは、旅する絵本マニアです!
「絵本巡礼の旅」と称して日本各地の古本屋をめぐるのが趣味です。
今日も素敵な絵本を紹介したいと思います。
銭湯に関わる業者さん
ふくの湯にはいろんな業者さんが訪れます。
年に一度、お風呂場の絵を描きかえにくるペンキ屋さん、牛乳屋さん、薪にする木材の廃材屋さん。
いろんなお仕事の人が携わって、銭湯は運営されているんですね。
けいちゃんもペンキ屋さんが銭湯の壁に富士山を描く姿に興味津々です。
銭湯を運営するお母さん、お父さんの仕事
まず表紙から、お母さんが朝10時頃に銭湯のシャッターを開けるところから一日が始まっています。
銭湯の玄関や脱衣場の掃除、
牛乳屋さんの対応、
火焚き場で薪を燃やす、
業者さんにお茶だし、
夕方の4時にのれんをかけたら開店、そこから番台、
夜の11時に閉店後の風呂掃除、
寝るのは夜中の12時過ぎだそうです。
家の掃除、茶碗洗い、炊事洗濯、子育てなども全部こなしながら、お母さん、お父さんは頑張っています。
けいちゃんもお母さんのそばについて、大人が働く姿を毎日自然と目の当たりにしているんですね。
ふくの湯の見取り図がおもしろい!
ふくの湯の中の風景も温かみのある絵のタッチで細かな描写まで描かれています。
風呂場や脱衣場はもちろんのこと、興味深かったのは、普段利用客の立場では決してお目にかかることができない、お風呂場の壁の後ろにある火焚き場の様子や、けいちゃん家族の生活スペースまで詳しく描かれていたことです。
ふくの湯の表舞台と裏舞台、けいちゃん家族の生活がとても密接な関係なのだなということが手に取るように分かりました。
壁のひび割れまで詳細に描かれているところが、長年愛されている銭湯なのだなということを感じさせられて作者のこだわりを感じました。
地元の人に愛される銭湯
ふくの湯に来るのは常連さんが多く、みんな顔見知りが多いようです。
最近、あの人見かけないねと心配したり、
風呂上がりには「おさきに」と声をかけたり。
けいちゃんもお友だちと一緒にお風呂に入っていました。
こんな地元のあたたかいつながりを感じられる銭湯って、現代ではとても貴重になってきているかもしれませんね。
まとめ
普段なかなか見ることのできない銭湯の舞台裏、銭湯に関わる人たちの様子が分かる大変貴重な絵本だと思います。
最近ではスーパー銭湯などの大型施設が出て、ふくの湯のような地元で長年愛される古い銭湯がだんだんと少なくなってきたように感じます。
「銭湯ってこんな感じだったよね」と再確認できるような、子どもの頃の懐かしい記憶が蘇ってくるような、そんな懐かしい絵本でした。