おべんともっておはなみに
今日はみんなでお花見に行く日。きつねのきっこはたくさんのお弁当を作って、いたちのちいとにいと一緒に、ふくろうのろくすけのところに誘いに行きます。しかし、ろくすけはうりぼうたちの子守りを頼まれて大忙し。そこで、きっこたちはうりぼうたちを連れて、みんなでお花見に出かけることにしました。
福音館書店
こどものとも 2007年4月号
作者名:こいでやすこ
出版社名:福音館書店
こんにちは、旅する絵本マニアです!
「絵本巡礼の旅」と称して日本各地の古本屋をめぐるのが趣味です。
今日も素敵な絵本を紹介したいと思います。
絵本を読むとお花見に行きたくなる
絵本の最初のページには
「おべんと おべんと うれしいな、おべんと もって おはなみに」
と口ずさみながら、おにぎりを結んでいるきっこちゃんが描かれています。
朝からおにぎり、のりまき、いなりずしをはりきって作っているんですよ。
きっこちゃんの口元に少しごはんつぶ(お弁当)がついていてユーモアがあります。
おにぎりの味見をしていたのでしょうか。
いなりずしは何とお揚げさんを味付けしたタレに漬け込むところから手作りのようです。
きつねのきっこちゃんは、きつねだけに、いなりずしの味付けにもこだわりが感じられます。
絶対美味しいに違いない!
きっこちゃんたちはお弁当をバスケットに入れて持っていきます。
バスケットにお弁当を入れるって素敵ですね、バスケットに入っているだけでさらに美味しそうに見えるのが不思議です。
はなさきやまに到着して、きっこざくらの下でみんなでお弁当を食べる場面では、とても美味しそうにおにぎりやサンドイッチをほおばっています。
青空の下でみんなで食べるお弁当って本当に美味しいですよね。
のりまきやおにぎりの下に笹の葉を敷いたり、紙ナプキンを膝に敷いたり、お皿やコップ、ストローも多めに持ってきているところがさすがきっこちゃんです。
お花見広場ではたこ焼き屋やお団子屋、金魚すくいなどの屋台、
赤い野点傘の下でお茶会を楽しむ着物姿の動物たち、
にんじんのお弁当を食べているうさぎたちなど、
いろいろなお花見会場の様子が描かれていて、とても賑やかです。
その中にひそかに人間の親子も1組だけ描かれているんです。
目を凝らしてじーっと探してみてください。
いろいろな発見があっておもしろいですよ。
春の草花がいっぱい!
絵本の中では春の草花がたくさん描かれています。
桜の花はもちろんのこと、ハクモクレン、ユキヤナギ、ツバキ、レンゲ、タンポポ、ナノハナ、ツクシ、スミレ、スイセン、モモ、その他…
本当にたくさんの草花が描かれていました。
あたたかい春の陽気に誘われて、あちこちで咲く春の花。
甘い香りもこちらまで漂ってきそうです。
最初にイタチのチイとニイの2匹と合流する場面で、黄色いブドウのような花が描かれているのですが、それが何という名前なのか、初めは分かりませんでした。
それから自分なりに春に咲く黄色いブドウのような花を調べてみると、「トサミズキ」という花が出てきました。
おそらくトサミズキなのかな?と思います。
また、お話の最後には、いのししのお母さんが採ってきたタケノコやゼンマイが描かれています。
春ならではの旬の山菜、新鮮で美味しそうですね。
山菜の天ぷらにして食べたら最高だろうなぁ…
「きっこざくら」は誕生の記念樹
お話の中できっこちゃんたちは「きっこざくら」とプレートがついた桜の木の下でお弁当を食べます。
このきっこちゃんと同じ名前の「きっこざくら」は、きっこちゃんが生まれた年にきっこちゃんのおおばあちゃんが植えたのだそうです。
おおばあちゃんとは、おそらく曾祖母(ひいおばあちゃん)にあたる存在のことだと思います。
きっこちゃんが生まれたことを記念した記念樹だったのですね。
小さい桜ですが、いっぱい花をつけています。
自分のために植えてくれた記念樹だと思うと、いつまでもおおばあちゃんの愛情を感じられ、うれしく感じられることでしょうね。
おおばあちゃんもきっこちゃんの成長をいつまでも見守っておられるのだろうなと感じます。
記念樹って素敵ですね。
きっこちゃんたちはまるで保育士さん
一緒にお花見に行くはずの、ふくろうのろくすけが、うりぼうたちの子守を頼まれてしまいます。
お花見に行けないかも…という空気が流れますが、きっこちゃんは
「それなら みんな いっしょに おはなみに いきましょう。おべんとうは たっぷり あるもの」
と、うりぼうたちも連れてお花見に行くことを思いつくのです。
お弁当はみんなに分けたらいい、面倒なら引き受けるよという心の広さや優しさを感じます。
そして、その場面でもう一つの注目は、よーくみると出発前にふくろうのろくすけの木には、いのししのお母さんが心配しないように
「はなさきやまへ おはなみに いってきます ろくすけ」
と置き手紙をぶら下げてあるんですよ。
うりぼうたちはまだまだ子どもなので、興味が向いたら勝手に違うところに行こうとしたり、疲れたら駄々をこねたりお世話が大変です。
でも、きっこちゃんが行きはおんぶきょうそう、帰りはひも列車など、おもしろいアイデアを思いついて楽しくお出かけを楽しむことができました。
敷物のゴザを結んでいたヒモを使って、ひも列車を思いつくなんてさすがですね。
おおざくらの下で食べようとしていましたが、大きなくまが昼寝をしていた時には、冬眠から目を覚ましたばかりだから、そっとしておかなきゃねと、うりぼうたちに説明して、そーっとそーっとその場を離れます。
おんぶきょうそうをして疲れていたでしょうし、おべんとうを早く食べたかったでしょうに、きっこちゃんは文句を言わずにくまさんに場所を譲ってあげるところが素晴らしいですね。
うりぼうたちの良いお手本になっているなと感じます。
人間界ではお花見に行くと、まるで競争かのように場所を陣取ったりする大人の姿がありますが、譲り合う心をきっこちゃんを見習いたいものです。
絵本の裏表紙には、きっこちゃんとイタチのチイとニイが山菜を入れたバスケットを置いて、桜の花でひもとおしをして遊んでいるイラストが描かれています。
やれやれ、うりぼうたちも無事に帰って、もう一度静かにお花見を楽しんでいるのかもしれませんね。
きっこちゃんたち、お疲れさまでした…!
まとめ
絵本のタイトルの通り、お弁当を持ってお花見に行きたくなる一冊です。
春の自然がたくさん描かれており、遠足のワクワク感を感じられるとても素敵な絵本でした。