つつみがみっつ
「るすにする」「かるいきびんなこねこなんびきいるか」「このこどこのこ」「このみくんさんねんさんくみのこ」「ようかんかうよ」「ぞうかもかうぞ」……。前から読んでも後ろから読んでも同じ文(回文)のオンパレード。言葉あそびの楽しさを、軽やかな絵とともに満喫する絵本です。
福音館書店
こどものとも226号
土屋耕一 さく
たざわしげる え
出版社名:福音館書店
こんにちは、旅する絵本マニアです!
「絵本巡礼の旅」と称して日本各地の古本屋をめぐるのが趣味です。
今日も素敵な絵本を紹介したいと思います。
「つつみがみっつ」ってどういう意味?
お父さんとお母さん、子どもの三人が風呂敷に包まれたものを持って立っている表紙のイラストから始まるこのお話。
謎のタイトルが興味をそそります。
表紙をひらくとすぐに分かりました。
前から読んでも後ろから読んでも同じ文の絵本、つまり回文(かいぶん)の絵本なのですね。
私が幼い頃、朝のTV番組「ひらけ!ポンキッキ」で「かいぶん21めんそう」という曲が流れていたのを思い出しました。
お正月の絵本だった
お正月にお友だちのおうちに親子で新年の挨拶に行くというお話なんですね。
この絵本は1975年1月1日に発行されたそうで、元旦に発行されているというところが実は作者の密かなこだわりだったのではないかと思えてなりません。
現代では珍しい火鉢(ひばち)の上にやかんが置かれていたり、今ではあまり見かけない昭和レトロなポット、瓶ビールに栓抜きが描かれています。
お友だちのおうちの大人たちは着物を着ていたり、昭和の懐かしいお正月の風景を垣間見ることができます。
色使いがおもしろい
お話の中ではいろいろな人や動物、風景などが描かれているのですが、色使いが独特でおもしろいなと感じました。
原色のようなベタっとした色は使わず、とても個性豊かな色の種類で描かれています。
特に遠くの山の絵が青やピンク・黄色などの様々な色を使って描かれていたり、土の中や空の雲の色がグラデーションのように微妙に変化した色だったり。
絵の線使いも左右対称などではなく、ちょっと歪んだ線だったり、その不完全さがとてもユーモアあふれていて味があります。
個人的には猫が何匹も連なっている絵の抜け感がとても好きです。
回文の言葉がシュールでツボにハマる
「かるいきびんなこねこなんびきいるか」
「このみくんさんねんさんくみのこ」
他にも大人が思わずクスッと笑ってしまうシュールでおもしろい回文が盛り沢山!
よくこんなマニアックな回文を思いついたものだと脱帽です。
おともだち…というくだりの回文は
「うちだもとお」という友だちがいるという突然の設定に、少し無茶ぶり感があり思わず「ほんとに!?」とツッコミを入れたくなりましたが、
おともだちの家にはしっかり「内田」という表札が掲げられていて、玄関には内田くんのお父さんが立っているという絵に思わず笑ってしまいました。
てつだうよ…というくだりの回文は、回文のために子どもが言わされている感満載で、「何度も何の用だって」という節に、「そこまで誓う?私なら本心じゃないだろうな…」と思うと、笑いのツボにハマりました。
まとめ
言葉あそびにぴったりの絵本です。
「なるほど、そんな回文もあるのか!」と大人も子どもも思わず感心してしまいます。
昭和レトロなお正月の絵や、ユーモアあふれる絵の線使い、色使いなどもおもしろい絵本でした。